天理教愛昭分教会
Heart & Heart

Heart & Heart
-Vol.007-
R169/07/01

編集後記

誠の心

遠い異郷の話です。

ある中年男性Sさんは一人暮らし。彼は少しゆっくりした人ですが、無口で真面目な人柄です。その彼が長年勤めてきた工場の社長が年老いて、後継者もいないので廃業することになりました。バブルの頃には15人居た従業員も今ではSさん一人です。この月末でいよいよ閉鎖というある日、同業者が工場を訪れ、この工場を譲って頂きたいとの申し入れ。しかも、このSさんも是非今まで通り働いて欲しいとの事です。「何故、Sさんもつけてですか?」と、元の社長が尋ねたところ、「今まで沢山の工場を見てきたが、塵一つ落ちていない。こんな綺麗な工場は初めて見ました。聞けばSさんが掃除・整理整頓しているとの事。是非、Sさんも一緒に来てください。」と、同業者氏が仰ったそうです。以来、一日の切れ目も無くこの工場に通って働き続けています。しかも、自転車で片道1時間の道のりを、雨の日も風の日もペダルを踏んで通っています。

若い頃、似たような話を立川忠義先生から聞いた事があります。ご存知の方もあるのでは? でも、現実にこんな事があるなんて、デジャヴー!です。

“貧しく小さくされた人たちを通して神の力は働く”との聖書の言葉を引用して、本田哲郎カトリック神父(63歳)は次のように云っています。

聖職者が元気を分け与えるのではない。人の痛み、苦しみ、寂しさが人一倍わかる人たちが、人の心を開放できる。

悲しい事があっても、あまり人前では出さず、万事控えめなSさんの誠の心を、見る人は見ていたのですね。声の大きい人、力の強い者が弱い者を淘汰していくようなこの頃の風潮の中で、暖かい気持ちにさせてもらいました。

→(金)